糖尿病の慢性合併症

糖尿病の慢性合併症

①細小血管症

糖尿病精神障害

糖尿病神経障害は、高血糖により末梢神経の伝達機能が障害されることによって起こります。慢性的な高血糖状態によって生じる神経障害で、糖尿病以外の原因を除外した除外診断となります。最も早期に出現し、最も頻度の高い糖尿病合併症であり、代表的な糖尿病神経障害として多発末梢神経障害や自律神経障害があり、多発末梢神経障害では、両足先や足底部の知覚障害(痛み、しびれ、冷感、ほてり感、感覚鈍麻)から発症し、徐々に上方へ進行します。自律神経障害では、下痢や勃起障害を除き無自覚症状で進行し、症状が現れたときには高度に進行していることが多く見られます。症状は便秘や下痢、立ちくらみ、失神、発汗異常、排尿回数の減少や排尿困難、下腹部膨隆、勃起障害などがみられます。これらの糖尿病神経障害が深刻化してしまうと、無痛覚による足潰瘍や壊疽、無痛性心筋梗塞、無自覚性低血糖、また手遅れになると下肢の切断など深刻な状況に陥る場合があります。これらの予防には適切な血糖コントロールと歩行運動などの下半身運動に加え、毎日のご自身での足の感覚や皮膚の色、傷の有無などの観察や定期的な糖尿病専門科にての診察が大事となります。当院では糖尿病専門外来がありますので、心当たりがある方は迷わずご連絡ください。

糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は糖尿病による合併症の一つで、高血糖による網膜の血管障害が原因で起こります。網膜の血管がもろくなり、眼底に出血やシミ(白斑)が認められる場合このことを単純網膜症と言います。また網膜の血管が詰まることで網膜に虚血が起こることを、増殖前網膜症と言います。次に虚血が進行し網膜の表面や硝子体のなかに新生血管が作られてしまうことを増殖網膜症とよびます。新生血管が破綻して硝子体出血を起こし、新生血管とともにできる増殖膜の牽引により網膜剥離が起こります。日本での失明原因としては第2位で約20%を占めています。

糖尿病腎症

糖尿病腎症は、高血糖により毛細血管が集まっている腎臓の糸球体という部分が障害されることによって起きます。腎機能障害の程度により第1期~第5期まで5つの病期に分けられます。腎症前期、早期腎症期、顕性腎症期、腎不全期、透析療法期があり、定期検査による早期発見、早期治療が進行を遅らせる最も有効な手段となります。我が国の透析導入患者さんの主要原疾患の最も多いものとなっております。糸球体が傷害され、腎不全に陥ると、血液の濾過が阻害され、老廃物の除去や排尿による水分の調節、血液のpHを調整する機能、血液の造血ホルモンの分泌や骨のカルシウム量を調節するビタミンDの活性化、血圧の調節が行えなくなってしまいます。そこで、腎不全や尿毒症に至り血液透析療法を検討することとなります。自靖会では糖尿専門外来や外来透析療法(人工透析)も行っており、透析療法にも詳しい専門医やスタッフがおります。お気軽にご質問ご相談ください。

②大血管症

糖尿病と心疾患、脳血管障害

糖尿病になると高血糖状態が続く事で血管が傷害され、これが慢性的に続くと動脈硬化を起こしやすくなります。動脈硬化が進むと狭心症・心筋梗塞などの心臓病や脳卒中などの脳血管障害を引き起こします。動脈硬化の危険因子をできるだけ取り除き、合併症を未然に防ぐことが重要となります。

動脈硬化の危険因子には糖尿病の他に高血圧症、脂質異常、肥満、加齢、喫煙、ストレス、冠動脈疾患の家族歴などが挙げられます。糖尿病患者さんではこれらの危険因子を重複して持ってることが多く、動脈硬化を起こしやすくなります。

そもそも動脈硬化とは?

動脈硬化とは、動脈の内側の壁に脂肪やコレステロールがたまり、その部分の血管が狭く、もろくなる病態です。心臓や脳に酸素や栄養を供給する冠動脈や脳動脈に動脈硬化が起きて血管が詰まると心筋梗塞や脳梗塞など命に係わる重大な合併症が引き起こされます。糖尿病は動脈硬化を促進し、脳心血管障害の危険因子となります。特に高血圧症との相乗効果は著明です。脳血管の細い領域で小梗塞が多発することが多く、半身麻痺やろれつが回らないなどの典型的な症状が出にくいのも特徴です。無症状のまま経過し脳CT検査で初めて診断される例もあります。当院では関連施設の井口腎泌尿器科・内科 親水にてCT検査を行うことが出来ますので、お気軽にご相談ください。

③その他

糖尿病と足病変

糖尿病では、足に様々な病変が生じやすく、悪化すると潰瘍や糖尿病壊疽を起こします。糖尿病足病変は、血管障害と神経障害、感染症が原因となります。壊疽のタイプによって治療方法は異なりますが、糖尿病足病変の多くが靴ずれや熱傷、外傷などのちょっとした傷口より感染症を合併して悪化しやすく、潰瘍や壊疽が引き起こされてしまいます。壊疽になってしまう原因として血管障害と神経障害があります。血管障害では動脈硬化などで足先の血流がわるくなり、更に白血球や傷の回復を促す血液成分の能力が低下することで小さな傷でも化膿してしまい、そのまま放置されることで壊疽に至ります。次に神経障害による壊疽ですが、糖尿病により知覚神経が麻痺し、病変に気がつかず傷や感染を放置し感染が悪化してしまい壊疽に至ってしまいます。そうならないよう血糖コントロールや適切な治療や指導が重要となります。

糖尿病と皮膚病変

高血糖、血管障害、神経障害などが誘因となり、皮膚炎をはじめとする様々な皮膚病変が起こります。糖尿病患者さんに合併しやすい皮膚病変は、カンジダ症、黒色棘皮症(表皮症)、帯状疱疹、皮膚掻痒症、リポイド類壊死症、前脛骨部色素斑、糖尿病性水泡、糖尿病壊疽、足白癬・爪白癬、掌蹠膿胞症、タコ、角化、ウオノメ、蜂窩織炎、糖尿病性浮腫性硬化症、オデキなどがあります。これからは悪化しやすく治りにくいため、予防が重要となります。予防方法は第一に血糖コントロールをきちんと行い、免疫システムが上手く働くよう抵抗力を高め、清潔を保ちます。また早期発見早期治療が大事となりますので、ひどくなる前に治療を行い、靴擦れや小さな傷も手当します。消毒液などを常備しましょう。壊疽につながることもあり、痛みがなくても腫れや色の変化、皮膚が剥けるなど異常が見られたら、すぐに医師に相談しましょう。

糖尿病の急性合併症についてはこちら

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糖尿病をはじめとする高血圧・高脂血症など、生活習慣病の治療に特化したクリニックです。

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解説した医師
崔 正福

崔 正福

役職:院長
専門分野:糖尿病内科・一般内科
経歴:順天堂大学医学部卒業、医学博士
医療法人社田光靖会入職 井口腎泌尿器科副院長就任
医療法人社田自靖会勤務を経て
2022年 9月 井口内科 中央開業、院長就任
糖尿病専門医としてブログを執筆