糖尿病の急性合併症

糖尿病の急性合併症

糖尿病ケトアシドーシス

 糖尿病ケトアシドーシスは高血糖性の急性代謝失調であり、極度にインスリンが不足したり、グルカゴン・アドレナリンなどのインスリン拮抗ホルモンが増えると、インスリンの作用が弱まって急に発症します。インスリンが不足すると血液中のブドウ糖を代謝できなくなり高血糖状態になります。すると、体はその代わりに脂肪を分解してエネルギーを作り出します。このときに副産物としてつくりだされるケトン体が血液中に急に増える(高ケトン血症)ことで、血液が酸性になり(ケトアシドーシス)体に異常が発生してしまいます。多くは1型糖尿病でみられますが、近頃では清涼飲料水を多飲する2型糖尿病でもみられ、ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトアシドーシス)と呼ばれています。

症状と治療

 糖尿病ケトアシドーシスは、若い人で発生しやすいと言われています。

症状として、高血糖による多飲、多尿、悪心、嘔吐、腹痛などの消化器症状、またブドウ糖が尿の中に大量に排出されることで起こる浸透圧利尿により、体液や電解質が失われることで、脱水状態になります。脱水やアシドーシスになると、低血圧や頻脈が見られることがあります。また早く深い呼吸(クルマウル呼吸)がみられ、吐いた息はアセトン臭がします。

 上記の症状が現れたり糖尿病ケトアシドーシスが起きましたら、入院施設での治療が必要です。治療の基本は十分な輸液、電解質の補正、インスリンの適切な投与です。処置が遅れると、脱水やアシドーシスにより意識障害や昏睡状態にまで至ります。迷わず救急車を呼んでください。

高浸透圧高血糖症候群

 高浸透圧高血糖症候群は高血糖性の急性代謝失調です。2型糖尿病患者さんが感染、脳血管障害、手術、高カロリー輸液、利尿薬やステロイドの投与により、インスリン作用不足が起こったときの高血糖に伴って見られます。症状が出るのが遅く、これらの原因が起きてから数日の期間を置いて発症します。

 高血糖による浸透圧利尿によって体内の水分が奪われることで引き起こされ、さらに著しい高血糖(600~2000mg/dl)と高度の脱水(高浸透圧血症)で循環不全をきたします。ただし、著しいアシドーシスは見られません。

症状と治療

 浸透圧高血糖症候群は高齢の方に発症しやすいと言われています。

様々な程度の意識障害、脱水に基づく多飲、多尿、体重減少、倦怠感などがみれられます。意識障害はゆっくりと起こってきますが、高浸透圧と脱水の進行に伴って深くなり、数時間から長い場合は1ヶ月に及ぶこともあります。その他に血圧低下、頻脈、皮膚や口の乾燥、片麻痺、一側性の腱反射亢進、病的反射の出現なども伴うことがあります。

 治療には、脱水と電解質の補正、インスリンの適切な投与が重要となり、脱水がひどい場合は昏睡状態にまでいたり、数回にわたって昏睡を繰り返すことがあります。

意識障害や昏睡状態になりますと、自分では対処できなくなりますので、周りの人や家族の方に知ってもらいましょう。

感染症

 糖尿病では自己免疫能力の低下、白血球機能の低下、血流障害などにより、体内にウイルスや細菌が侵入しても抵抗する機能が低下しているため、感染症にかかりやすくなっています。

糖尿病でよくみられる感染症

種類
尿路感染症膀胱炎、腎盂腎炎、腎周囲膿瘍など
呼吸器感染症かぜ症候群、インフレンザ、肺炎など
消化器感染症嘔吐や下痢、発熱などの消化器症状のために、血糖コントロールが悪化し脱水、昏睡の原因となることがあります。
軟部組織・皮膚感染症下肢への感染が多く骨髄炎を発症したり、足の切断、死に至ることもあります。また、皮膚の感染症は壊疽の原因になることがあるため、こまめにご自身でのケアが重要です。

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解説した医師
崔 正福

崔 正福

役職:院長
専門分野:糖尿病内科・一般内科
経歴:順天堂大学医学部卒業、医学博士
医療法人社田光靖会入職 井口腎泌尿器科副院長就任
医療法人社田自靖会勤務を経て
2022年 9月 井口内科 中央開業、院長就任
糖尿病専門医としてブログを執筆